大阪に本社を置くスタートアップ企業が、今ではシャンプー&ヘアケアカテゴリーで外資系ブランドを抜き、ドラックストアではトップのシェアを誇る。そのなかのコアブランドがローンチから10年を迎えました。この成功は、ブランド自身が持つ優れた商品とクリエイティブのみならず、定石に囚われない商品開発のPDCAが秀逸でした。外部パートナーとして私たちが商品企画やマーケティングコミュニケーション、プロモーションの観点から関わり、間近で創造を繰り返す姿勢と他の消費財メーカーとは一線を画す、社内外と共に問を立て解決するという共創のスタンスを集積的に経験できたことを、ブランド10周年を陰ながらお祝いするとともに、我々外部からの視点での気づきを改めて綴ることにします。商品企画やマーケティングに携わられる方の気づきに繋がればと思います。
私たちがプロジェクトに参画することになったのは、ブランドが誕生してわずか1年が過ぎた頃のことです。出発点は、コスメや雑貨などの最大商戦であるクリスマスオケージョン。「シャンプーをクリスマスギフトとして成立させる」この一見難しい挑戦には、日用品・消費財と言われるイメージを跨え、「贈り物」にふさわしい特別感までも演出することが欠かせなかった。
特に、一部のドラッグストアを販売チャネルとして営業を視野に入れていた時期のため、ヘアサロン等で展開する高価格商材とも当時、圧倒的なシェアで露出し手軽な価格帯の商品とも異なる戦略や企画が必要だと聞いていました。
クリスマスという特別な季節に、人々がどんな気持ちで商品を選び、受け取るのか。その背景を深く理解することが、成功するプロモーションの鍵となる。私たちが担当したこのプロジェクトでも、まず時間をかけたのは「価値をつくる前の、意味を創造するプロセス」でした。
具体的にはブランドが目指したのは、単なるシャンプーセットではなく、「クリスマスまでの日々を彩る贈り物」として生活者の心に響く商品を届けること。そのために、ターゲットである女性の生活に寄り添い、クリスマスシーズンをどのように過ごすのかを細かにイメージするところから始めました。 「クリスマス前の日常に寄り添うギフト」 ターゲットは、クリスマスを控えた日々を丁寧に過ごすことを楽しむ自家需要も含めた女性たち。
そこで、「クリスマスまでの数日を特別なものにする」というテーマを軸に、商品企画を進めました。ディスカッションの中で繰り返し浮かんだのは、「ヘアケアだけでなく、心と体を整える時間をどう届けるか」という問いです。 その結果、クリスマスに向けて念入りにヘアケアを楽しむためのシャンプーとトリートメントに加え、ハーブの限定入浴剤をセットにすることが決まりました。この入浴剤は、通常キャンディーなどを入れるアルミのクリスマスオーナメント型の丸缶に詰められ、贈られる人が飾る楽しみも味わえるアイテムとして提案。見た目だけでなく、香りや使い心地を通じて「特別なバスタイム」を演出するものとして、クライアントとともに練り上げました。 ※ここでは守秘義務の観点から、プロジェクトの詳細や内容は経験から加工して記載しています。
「生活者の行動シナリオをリアルに描き、あるべき姿を創造する」
さらに大切にしたのは、単に商品を並べるのではなく、生活者の日々のストーリーにどう寄り添うかという視点です。クリスマスシーズンの女性が、どのように気持ちを高め、心地よい時間を過ごせるのか。たとえば、入浴剤の香りに包まれながらバスタイムを満喫したり、クリスマスツリーに缶を飾る楽しさを味わったり。SNSでシャンプー容器だけではなく可愛らしいオーナメントと共に投稿する風景、その一つひとつのシーンを具体的にイメージしながら、ディスカッションを重ねました。 こうしたプロセスを通じて、単なるプロモーションアイデアではなく、生活者の感情にも寄り添う「意味のある商品」を形にすることを目指しました。この「意味を創造するプロセス」が、プロジェクト全体の成功を支えた大きな要因だったと私たちは感じています。 「共創がもたらす価値」 このようにして生まれたクリスマスギフトは、販売開始後にECモールのカテゴリーランキングで1位を獲得し、想定を上回るスピードで完売。翌年以降も継続企画が立ち上がり、ギフトの要素をより緻密にシナリオをブラッシュアップした仕掛けや、クラアイント側で顧客体験を想起させるイメージムービー(価格や商品訴求ではないストーリー)を制作し世界観を届け、その後の企業の成長を支えるブランドになりました。
商品のデザインやブランドの世界観を忠実に反映したブランドクリエイティブチームの力、そして彼らと共に生活者目線でストーリーを紡いだ「共創」があってこそ実現できたものと感じています。価値を創造する前に「意味を創造する」プロセスの重要性です。商品そのものの魅力だけではなく、生活者がその商品をどのように使い、どんな感情を抱くのかを深く考察し、意見交換を重ねることで、細かくちりばめられた施策が共感を生み出すことができます。
私たちはこれからも、クライアントと共に「意味を創造するプロセス」に力を注ぎ、生活者の心に届くマーケティングとコミュニケーションを実現していきたいと考えています。
同社のこれまでの歩みと葛藤、また組織崩壊から仕組化の導入など、ウェビナーや代表自らもnoteに赤裸々に記載していますので、経営者者の方はぜひ覗いてみててはいかがでしょうか。私にとっても、同い年で活躍している経営者の姿は、モチベーションを高める素晴らしい出会いです。
